大腸肛門外科
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Operation01
世界における内痔核に対する各種手術方法
内痔核とは肛門の中の静脈がはれたものです(図1)。内痔核は、脱出して指で押し込まなければ中に入らないもの(Ⅲ度)や、いつも出っぱなしのもの(Ⅳ度)(図2)になると手術でないと治りません。
日本においては、手術の方法として主なものには、輪ゴム結紮術(図3)、ジオンによる硬化療法、結紮切除術、PPH(図4)があります。
各術式の比較は、以下に掲載してある表に記載してある通りです。(手術実績(件)として記載してある数は、私が手術を施行させていただいた数です。)
根本的に治す手術は、結紮切除術とPPHです。両者とも入院が必要です。結紮切除術の良い点は、①切除してしまうから確実であること、②再発が少ないことです。 PPHの良い点は、①術後の痛みが軽い事、②入院期間・休業期間が短い事、③再発が少ない事です。
どうしても入院できない方や、根本的でなくてもよいから、なるべく負担の少ない方法で治したい方に対しては日帰り手術があります。日帰り手術には、マクギブニー輪ゴム結紮術とジオンによる硬化療法があります。輪ゴム結紮術の良い点は、①1~2分の短い時間で簡単に終わる事、②休業期間は0~1日と短い事、③輪ゴムをかけた所は腐って落ちて確実になくなる事、④再発が少ない事です。ジオンによる硬化療法の良い点は、①術後の痛みが軽い事、②休業期間が短い事、③一度に3個の内痔核でも処置できる事です。
逆に結紮切除術の悪い点は、①術後の痛みが強い事、②入院・休業期間が長い事です。PPHの悪い点は、まれに(1100人に2人程度)原因不明の肛門の痛みを訴える人がいる事です。輪ゴム結紮術の悪い点は、①あまりにも大きい内痔核には輪ゴムがかからなくて治せない事、②1度に1か所の内痔核にしか輪ゴムをかけれない事、③輪ゴムをかけた部分は術後1週間前後ある程度痛い事です。ジオンによる硬化療法の悪い点は、①外まではれの強い内痔核に対しては効かない場合が多い事、②薬剤が直腸まで流れていき、まれに直腸に潰瘍ができて出血したり、直腸が狭くなり便が出にくくなることがある事、③まれに薬剤のせいで、直腸と膣の間に交通ができることがある事、④まれに薬剤の注射後、肛門や直腸のまわりにウミがたまり、敗血症(体中にばい菌が回り高熱が出たりする事)をきたすことがある事です。
日本においては、近年ジオンによる硬化療法が非常によく行われています。そして以前より、日本においては、PPHを行っている病院は非常に少数です。
一方、世界においては、輪ゴム結紮術、結紮切除術、PPHはよく行われていますが、逆にジオンによる硬化療法はほとんど行われておりません。
PPHのもともとの方法(PPH原法)は、奏効率が低い、再発が多いという報告もありましたので、私たちは、PPH原法を改良してPPH低位吻合法という方法を考案し、行ったところ、奏効率がきわめて高く、再発も非常に少ないことが判明しました。そしてその成果は、大腸肛門分野における権威ある国際雑誌「International Journal of Colorectal Disease」に2017年9月27日付で掲載されました。
このように各種手術術式には、それぞれ良い点、悪い点がありますので、患者様はご自分の事情に応じて、最も適当と思われる方法を選択されればよいものと思われます。