大腸肛門外科
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大腸肛門外科に関する患者様からのご質問
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ヘルニアの手術は最近、人工の布を入れる方法がよく行われていると聞きました。また手術にもいろいろな方法があると聞きましたが、どの方法が最も再発が少ないのでしょうか?また手術のあとの合併症にはどのようなものがあるのでしょうか?
ヘルニアの手術はおっしゃる通り、最近では人工の布を入れるメッシュ法が主流になっています。メッシュ法にもいろいろあります。腹膜の外に布を敷くダイレクトクーゲル法、ポリソフト法、おなかの弱い部分に人工の布で作った栓をして、その上に人工の布をあてるメッシュプラグ法、腹膜の外に人工の布を敷き、弱いところへ栓をして、さらにその上に人工の布を敷くPHS・UHS法などがあります。
福井県済生会病院での検討の結果を示しておきます。同院では平成7年1月1日より平成27年3月31日までの間に、延べ1710人の成人のそけい部ヘルニアの方が手術を受けられました。手術の方法はメッシュプラグ法が32%と最も多く、メッシュを使わない従来の方法(従来法)は17%、PHS・UHS法は21%、ダイレクトクーゲル法は12%、ポリソフト法は12%でした。術後20年間の累積再発率は、メッシュプラグ法、従来法、PHS・UHS法、ポリソフト法、、ダイレクトクーゲル法の順に再発が少ないという結果でした。しかしこれらの間には統計学的な有意差は認められませんでした。今のところ、全国にもどの方法が最も再発が少ないのかは、まだ結果が出ていないのが現状です。
一方、最近ではおなかの中にカメラを入れる腹腔鏡を用いてメッシュを入れヘルニアを治す方法もよく行われるようになってきました。この方法の欠点は、全身麻酔が必要な事と、おなかの中を触るため腸閉塞などの術後合併症がおこることです。メッシュ法の欠点はメッシュにバイ菌がついて感染を起こすことと、術後のキズの部分にいつも痛みを感じる慢性疼痛をきたすことがある点です。これに対して、従来法ではメッシュを入れないため感染や慢性疼痛をきたすことはありません。 -
最近、痔の手術で痛みが少なく、入院日数が少なく、早く仕事にも行けるPPHという方法があると聞きましたが、どのような方法ですか?(35才 男性)
ひとくちに痔と言ってもいろいろな種類があります。痔の中で最も多いのが内痔核とよばれるものです。内痔核とは肛門の中の静脈がふくらんだものを言います。
【内痔核の症状】
内痔核にも症状の軽いものから重症のものまでいろいろと程度があります。その程度によりⅠ~Ⅳ度まで4段階に分けられています。最も軽いものは、肛門の中で静脈がふくらんでいて、時々出血するものです(内痔核Ⅰ度)(図1)。もっと大きくなると、排便時に一緒に肛門の外へ出てきますが(脱出)、自然と中へ戻っていきます(内痔核Ⅱ度)。さらに大きくなると、排便時に外へ出てきて指で押し込まなければ中に入らないようになります(内痔核Ⅲ度)(図2)。長い間立っていたり、歩行時に出てきたり、しゃがんだだけで出てくる方もおられます。脱出すると違和感があり痛みもあり大変具合が悪いものです。さらにひどくなると中へ押しこんでもすぐ外へ出てきて、いつも外に出ている状態となります(内痔核Ⅳ度)。
詳しくは、ヘルニア・肛門の病気の診断・治療方法のページに記載しております。
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最近痔瘻の手術を受けましたが、手術の後もウミが出るのが治らず、また、手術のあと肛門のしまりも悪くなり、便がもれやすくなりました。痔瘻とは治りにくいやっかいな病気ですか?(45才 男性)
痔瘻とは、肛門の中に小さな穴(原発口)があり、肛門の外にも穴(2次口)があり、この間が管(クダ)でつながっている病気です。
ご指摘のごとく、痔瘻は肛門の病気の中では最もやっかいな病気と考えられています。その理由としては、一つは手術しても治らないことが多いということがあげられます。そしてもう一つは痔瘻のクダは肛門括約筋(肛門をしめる筋肉)の中を走っているため、手術により括約筋を傷つけると失禁(便が垂れ流しになること)の危険があるからです。
手術しても治らない原因の一つとしては、痔瘻の入り口(原発口)やクダの一部(原発巣)が取り残されている場合があります。つまり痔瘻の手術は取り残すと手術しても治らないし、取りすぎると肛門のしまりが悪くなるということで、肛門の手術の中で最も気を使う手術といって良いでしょう。
私達は、この最も気を使う痔瘻に対しては、独自に考案した皮膚肛門上皮切除下・瘻管全摘・括約筋間閉鎖術(開放くりぬき術)を行っております。この方法は痔瘻が確実に治り、また、術後失禁をきたさない優れた方法と考えています。詳しくは、ヘルニア・肛門の病気の診断・治療方法のページに記載しております。