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大腸肛門外科proctology

大腸肛門の病気およびヘルニアに関して多く寄せられた質問をまとめました
ご参考にしてください

Q1:ヘルニアの手術は最近、人工の布を入れる方法がよく行われていると聞きました。
また手術にもいろいろな方法があると聞きましたが、どの方法が最も再発が少ないのでしょうか?また手術のあとの合併症にはどのようなものがあるのでしょうか?

ヘルニアの手術はおっしゃる通り、最近では人工の布を入れるメッシュ法が主流になっています。メッシュ法にもいろいろあります。腹膜の外に布を敷くダイレクトクーゲル法、ポリソフト法、おなかの弱い部分に人工の布で作った栓をして、その上に人工の布をあてるメッシュプラグ法、腹膜の外に人工の布を敷き、弱いところへ栓をして、さらにその上に人工の布を敷くPHS・UHS法などがあります。
福井県済生会病院での検討の結果を示しておきます。同院では平成7年1月1日より平成27年3月31日までの間に、延べ1710人の成人のそけい部ヘルニアの方が手術を受けられました。手術の方法はメッシュプラグ法が32%と最も多く、メッシュを使わない従来の方法(従来法)は17%、PHS・UHS法は21%、ダイレクトクーゲル法は12%、ポリソフト法は12%でした。術後20年間の累積再発率は、メッシュプラグ法、従来法、PHS・UHS法、ポリソフト法、、ダイレクトクーゲル法の順に再発が少ないという結果でした。しかしこれらの間には統計学的な有意差は認められませんでした。今のところ、全国にもどの方法が最も再発が少ないのかは、まだ結果が出ていないのが現状です。
一方、最近ではおなかの中にカメラを入れる腹腔鏡を用いてメッシュを入れヘルニアを治す方法もよく行われるようになってきました。この方法の欠点は、全身麻酔が必要な事と、おなかの中を触るため腸閉塞などの術後合併症がおこることです。メッシュ法の欠点はメッシュにバイ菌がついて感染を起こすことと、術後のキズの部分にいつも痛みを感じる慢性疼痛をきたすことがある点です。これに対して、従来法ではメッシュを入れないため感染や慢性疼痛をきたすことはありません。

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Q2:最近、痔の手術で痛みが少なく、入院日数が少なく、早く仕事にも行けるPPHという方法があると聞きましたが、どのような方法ですか?(35才 男性)

ひとくちに痔と言ってもいろいろな種類があります。痔の中で最も多いのが内痔核とよばれるものです。内痔核とは肛門の中の静脈がふくらんだものを言います。

【内痔核の症状】
内痔核にも症状の軽いものから重症のものまでいろいろと程度があります。その程度によりT〜W度まで4段階に分けられています。最も軽いものは、肛門の中で静脈がふくらんでいて、時々出血するものです(内痔核T度)(図1)。もっと大きくなると、排便時に一緒に肛門の外へ出てきますが(脱出)、自然と中へ戻っていきます(内痔核U度)。さらに大きくなると、排便時に外へ出てきて指で押し込まなければ中に入らないようになります(内痔核V度)(図2)。長い間立っていたり、歩行時に出てきたり、しゃがんだだけで出てくる方もおられます。脱出すると違和感があり痛みもあり大変具合が悪いものです。さらにひどくなると中へ押しこんでもすぐ外へ出てきて、いつも外に出ている状態となります(内痔核W度)。

         
              
図1           図2

【治療】

内痔核の治療としては、T度の内痔核に対しては便秘を避けるなど生活に注意し、出血している時は坐薬、軟膏を入れたり、お薬を飲んだリします。T度の内痔核はお薬等の保存的治療をしていれば、たいていの場合出血は止まります。
U度の内痔核もお薬で治療しますが、よくならない場合は手術を行う場合もあります。
V度、W度の内痔核は、坐薬、軟膏などの薬ではほとんどの場合治りません。排便のたびごとに脱出したり、歩行時に脱出して具合が悪いし、どうしても治したいと思われる場合は手術しかありません。
またT度やU度の内痔核の場合でお薬で治療していても効かずに、まれに出血が多くて貧血となる場合があります。このような場合も手術が必要となります。手術の方法としては大きく分けて以下に示しますように4つの方法があります。

【手術の方法】 
 1.輪ゴム結紮(けっさつ)術:外来で治療が可能
 2.硬化療法:薬剤を内痔核に注射して小さくする方法です。外来で治療が可能
 3.結紮(けっさつ)切除術:古くから広くおこなわれている手術法
 4.PPH(直腸粘膜環状切除術):比較的新しい手術方法です
 輪ゴム結紮術、硬化療法は入院せずに外来で行うことができますが、他は入院が必要です。

1.輪ゴム結紮術(図3)
器械を用いて内痔核に特殊な輪ゴムをかけて腐らせておとす方法です。入院せずに外来で治療することができます。麻酔なしで行います。輪ゴムをかけるだけなので一瞬で終わります。痛みの感じる神経のある部分まで輪ゴムがかかることが多いため、術後はある程度の痛みがあります。痛み止めのお薬を飲んでいただきますが、この痛みは7日ほどすれば楽になります。輪ゴムをかけた内痔核は血液が来なくなり、次第に縮んで小さくなり腐っていき3〜14日後に脱落します。腐って落ちた後にはキズができます。このキズは次第に皮がはって約一か月かけて治っていきます。
私たちは原則として1回に1箇所の内痔核しか輪ゴムをかけない方が良いと考えていますので、2個、3個と内痔核がたくさんある方で一回で治してほしいと思っておられる方はできません。
また、あまりにも内痔核が大きい場合には輪ゴムがかかりませんのでこの方法ではできません。
再発率は意外と少なく、私達は平成1年1月19日より平成24年8月31日までの間に237人の内痔核の方に行いましたが再発された方は4名(1.7%)だけでした。入院できなくても外来で治療することを希望される方には良い方法と思われます。保険でも認められている方法です。
ただ、初めて外来に来られたその日にはできません。一度診察をさせていただいてから、後日もう一度外来に来ていただき、手術室で輪ゴム結紮術を行うことになります。

                 
                      図3

2.硬化療法
内痔核にお薬を注射して内痔核を小さくする方法です。ジオンやパオスクレ―というお薬を用います。ジオンというお薬を注射する方法は平成17年3月より行われるようになってきた新しい方法です。保険にも通っている方法です。ものを取ってくるのではなく、注射をするだけですからキズは全くできず手術のあとの痛みは4つの方法の中では一番軽く、日帰りで行うことができます。注射のあとは肛門の腫れぼったい感じや、軽い痛みがあります。仕事には平均すると術後4日目に行っておられます。
ただ、薬頼みの方法なので、薬が効かない人と、逆に薬が効きすぎる人がおられ、私の経験では85%の方は脱出が無くなりますが、15%の方は薬の効きが悪いため、注射をした後も相変わらず排便時に脱出を認めるという欠点があります。また、脱出がいったん良くなった方でも1年後に約6.5%の方が再発して脱出をきたします。手術15年後の累積再発率は13.7%でした。
肝臓が悪いことなどの理由で出血しやすい方で、手術するには手術の後の出血が心配な方でも、この方法で治療することができます。しかし腎臓の働きの悪い方には、このジオンは使うことはできません。

3.結紮(けっさつ)切除術
これは昔から行われている方法です。内痔核に流れ込んでいる動脈をしばり(結紮(けっさつ)し)内痔核そのものを取ってくる(切除する)方法です。脱出する内痔核そのものを取ってしまうため、最も確実な方法です。
切除後はキズができます。私たちはキズは縫わずに開放としています。私たちの経験ではその方が痛みが軽いからです。通常、肛門には奥より3本動脈が流れ込んでおり、この3本の動脈の流域に内痔核はできます。このため3箇所の動脈をしばり3箇所内痔核を切除します。
保険でも認められている方法です。
残った小さい内痔核(副痔核)がまた大きくなって再発する場合があります。手術15年後の累積再発率は3.7%でした。欠点としては、比較的大きなキズが肛門の外から中にかけて3箇所できるため、排便の時や排便の後が痛いということがあります。痛みは個人差があり程度は色々です。かなり痛いと言う方もいれば、大したことは無いと言う方もいます。一般的には痛みに敏感な若い方は痛みを強く訴えられますが、御高齢の方は痛みが少ないように思われます。
全入院日数は平均8日間です。術後10〜14日ほどするとキズに肉が盛り上がり、痛みはかなり楽になってきます。手術後、痛みが軽くなり、仕事に行けるのは術後平均16日後です。
術後2週間は重いものを持ったり、アルコールを飲んだり、あまりに強くいきんだりすると大量に出血して再び入院しなければならない場合がありますので、術後2週間は先に延べましたことは避けるようにしてください。術後2週間を過ぎれば、たくさん出血する心配はまずなくなります。
キズに完全に皮がはると縫ったみたいに1本の線になります。完全に皮がはるまでに約1ヶ月以上かかります。それまではウミがカーゼに付きます。完全に皮がはればウミは付かなくなります。

4.PPH(直腸粘膜環状切除術)
この方法は内痔核のある肛門には全くさわらずに、肛門の奥の直腸の粘膜と粘膜の下の血管などの組織を環状に3~4p切除して縫合する方法です。これを器械を用いて一度に行ってしまいます。粘膜および粘膜の下の組織を3~4p切除し縫合する事により、外に脱出する内痔核を奥に引っ張り込むことになります。これにより排便時に脱出する事はなくなります。また肛門の奥の直腸に縫合したキズができますが、このキズより下には血液がいかなくなります。血液がいかなくなると内痔核が次第にしぼんでいきます。3ヶ月から1年ほどかけてだんだんしぼんでいくと言われています。
要するに
・内痔核を奥へ引っ張り込む事と
・血流が来ないようにする事で内痔核を治そうとする方法です。
  

肛門には全くキズができません。また直腸にはキズはできますが、直腸の粘膜には痛みを感じる神経がないため、手術の後の痛みは軽く、早く退院できます。手術の翌日でも排便があり異常なければ退院可能です。平均的には術後3日目に退院されます。全入院日数は平均6日間です。
また早く仕事に行くこともできます。手術した方は術後平均9日目に仕事に行っておられます。しかし重いものを持ったりする仕事は術後2週間避けてください。結紮切除術と同じように術後2週間は大量に出血することがあるからです。その他、術後2週間はアルコールを飲んだり、自転車に乗ったり、10s以上重いものを持ったり、あまりにも強くいきんだりすると、出血して再び入院しなければならない場合がありますので、これらの事は控えてください。
PPHは1998年頃よりヨーロッパで始められ、現在欧米では広く行われている主流の手術となっていますが、日本では1部の病院でしか行われていません。
しかし、痛みが少なく、患者さんに大変喜ばれる、先進的な手術であるためPPHは先進医療として厚生労働省に認定されました。平成20年4月よりPPHは先進医療として認定された病院以外でも行ってよい事になりました。
PPHの欠点としては
・慢性特発性直腸肛門痛がおこることがある事です。これは手術のキズはきれいに治っているのに、いつも肛門や肛門の奥が痛いという症状です。頻度は0.2%(500人に1人)で原因は不明です。キズを切除し、もう一回手で縫い直すと痛みが取れる場合があります。

入院手術に要する費用に関しては、
結紮切除術は6日間に入院の場合保険がきき、3割負担で約7万5千円の費用がかかります。
PPHは平成20年4月より保険で認められるようになり、5日間の入院で手術費は約7万円かかります。

PPHの長所としては先ほど述べましたように
・手術後の痛みが軽い
・早く退院できる
・早く仕事に行ける
・入院期間が短いため、結紮切除術と比べると費用(入院費)が安くてすむ等があります。

福井県済生会病院および慈豊会田中病院では平成12年1月1日より平成28年9月30日現在までの間に985人の方がこのPPHの手術を受けられました。手術16年後の累積再発率は2.5%と、ジオン、結紮切除術、PPHの3法の中ではPPHが最も再発が少ない結果でした。また、万が一再発した場合、多くは先に延べました輪ゴム結紮術を外来で行って治すことができます。

以上述べてきましたように、内痔核の手術には4つの方法があります。それぞれ長所、短所があります。私たちは患者さんが希望する方法を行うようにしています。
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Q3:最近痔瘻の手術を受けましたが、手術の後もウミが出るのが治らず、また、手術のあと肛門のしまりも悪くなり、便がもれやすくなりました。痔瘻とは治りにくいやっかいな病気ですか?
(45才 男性)

痔瘻とは、肛門の中に小さな穴(原発口)があり、肛門の外にも穴(2次口)があり、この間が管(クダ)でつながっている病気です。(図4)
                 
                      
図4


ご指摘のごとく、痔瘻は肛門の病気の中では最もやっかいな病気と考えられています。その理由としては、一つは手術しても治らないことが多いということがあげられます。そしてもう一つは痔瘻のクダは肛門括約筋(肛門をしめる筋肉)の中を走っているため、手術により括約筋を傷つけると失禁(便が垂れ流しになること)の危険があるからです。
手術しても治らない原因の一つとしては、痔瘻の入り口(原発口)やクダの一部(原発巣)が取り残されている場合があります。つまり痔瘻の手術は取り残すと手術しても治らないし、取りすぎると肛門のしまりが悪くなるということで、肛門の手術の中で最も気を使う手術といって良いでしょう。
私達は、この最も気を使う痔瘻に対しては、独自に考案した皮膚肛門上皮切除下・瘻管全摘・括約筋間閉鎖術(開放くりぬき術)を行っております。この方法は痔瘻が確実に治り、また、術後失禁をきたさない優れた方法と考えています。

【痔瘻の症状】
1.排膿
肛門の中の穴(原発口)から便の中のバイ菌が入り、クダの中で繁殖してウミがたまってくると、外の穴よりウミが出てきます。下着がウミや血で汚れるようになります。また、ウミのにおいがして不愉快な思いをします。外の穴(2次口)から、おならが出るという方もおられます。

2.肛門のはれ、痛み
肛門の外の穴(2次口)がふさがってしまった場合は、クダの中でウミがどんどん溜まり肛門がはれて痛くなります。

3.発熱
ウミがたまってウミの行き場がなくなってくると熱が出ることもあります。そしてウミが外へ出ると痛みがなくなり、腫れも取れ、熱もなくなります。また、長い間放置するとまれにガン(痔瘻ガン)になる場合があります。

【痔瘻の治療】
痔瘻は薬では治らず、治療は手術しかありません(小児の場合は自然に治る場合があります)。手術方法としては大体以下のような方法があります。
  1.シートン法
  2.切開開放術
  3.くりぬき術(肛門括約筋温存手術)
  4.開放くりぬき術(皮膚肛門上皮開放下・瘻管全摘・括約筋間閉鎖術)

1.シートン法
痔瘻のクダに沿って外の穴(2次口)より肛門の中の穴(原発口)に向かい、ゴムひもやペンローズドレーンと呼ばれる柔らかいクダ(シートン)を入れる方法です。クダにそってウミが外へ排泄されます。クダは異物であるため、自然と外へ出されようとしますので、時間が経つとシートンが外へ出されて痔瘻も治ります。なかなか取れない場合は、少しずつゴムひもを締めていくと組織が少しずつ切れていき、最後にはゴムひもが取れ、キズも治り、痔瘻も治ります。
クローン病という腸にキズができたり腸が狭くなる病気があります。時にこのクローン病が原因で痔瘻ができる場合があります。クローン病が原因の痔瘻は、普通の痔瘻の手術では治りにくいことが多いために、おもにこの方法を行っています。入院せず外来でできる場合もあります。
※クシャラスートラを用いたシートン法
これはインドで作られたクシャラスートラと呼ばれる、薬をしみ込ませた糸を用いておこなうシートン法です。

切開開放術
痔瘻のクダに沿ってメスを入れ、痔瘻を括約筋とともにメスで切って開放する方法です。最も確実で治りやすい方法と言われています。しかし括約筋が切れてしまうため、切る部位によっては、肛門のしまりが弱くなったり、便がもれてしまう場合があります。ひどい場合は便が垂れ流しになったりする場合があります。

くりぬき法(肛門括約筋温存手術)
肛門をしめる筋肉(括約筋)は切らずに、痔瘻のクダだけをくり抜いて取ってしまう方法です。括約筋はあまり傷つけられないため、手術後の肛門のしまりは切開開放術と比べるとよく保たれます。しかし、切開開放術と比べると、せっかく手術をしても治らない方が、かなりおられます。くりぬき術を行っても4人に1人は治らないという報告もあります。

開放くりぬき術(皮膚肛門上皮切除下・瘻管全摘・括約筋間閉鎖術)(肛門括約筋温存手術)
私達が独自に考案した方法です。切開開放術とくりぬき術の両者の長所を取り入れた方法と考えております。
この方法は括約筋は切らずに温存し、痔瘻のクダだけをくりぬいてくる点は、くりぬき術と同じですが、痔瘻の入り口である中の穴(原発口)を肛門の中の粘膜(肛門上皮)とともに切除し、キズを縫わずに開放しておき、クダをくりぬいた後にできるすき間を縫って閉じる方法です。こうする事により切開開放術と同等の良い手術成績が得られ、かつ肛門のしまりも良く保たれます。
2013年7月31日現在、385名の方がこの手術を受けられましたが、治らなかった方は10名(2.6%)だけでした。治らない場合は、シートン法などの外来処置で治すことができる場合もあります。また、このように治らなかった方は昔に手術を受けられた方がほとんどで、最近では手術をして治らない方はほとんどおられません。
手術を受けられた方のアンケート調査でも、便がもれて日常生活に支障をきたしている方は1人もおられませんでした。
術後は痛みが強くなければ2日間で退院することができます。(平均の入院期間は7日間です。)
ご質問者の場合も、手術より時間があまり経過していなければ、治る経過途中かもしれませんが、手術して3ヶ月以上経っているのにまだウミが出るようでしたら、痔瘻の一部が残っている可能性があります。専門医の受診をお勧めします。


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Q4:最近、排便時や、立ったり歩いたりすると、肛門の奥から何か出てくるようになりました。歩いていると出てくるので歩きにくく、最近では家で寝てばかりいます。また、下着が粘液や血でよく汚れます。どのような病気が考えられるでしょうか?また、薬では治らず手術が必要な場合、私のように年をとっていても手術はできるでしょうか?(83才女性)

お話をお伺いして考られる病気としては、別の項で述べました内痔核も考えられますが、むしろ直腸脱の方が考えられます。直腸脱とは肛門の奥の直腸が外へ出てくる病気です。直腸脱の方の9割は肛門のしまりがゆるい状態です。直腸脱は、時に若い方にも見られますが、普通は高齢の女性に多く見られます。

【直腸脱の症状】
1.脱出
肛門の奥の直腸などの腸が肛門の外へ出てきます。(図5)出てくると違和感があり、時に痛みも感じます。肛門のしまりがゆるいために、出てきた直腸を中に入れてもまたすぐ出てきます。ひどい場合は、歩くとすぐ出てくるため、歩けずいつも寝てばかりいて、かなり行動が制限される方もおられます。これはご本人にとり、生活の質が落ち、大変具合が悪いようです。そのため、高齢でも手術を希望される方が多いです。
                   
                       図5
2.便失禁
肛門のしまりがゆるいため、便が我慢できずに出てしまう場合があります。

3.下着の汚れ
直腸などの腸が肛門の外へ出てくるため、下着が粘液で汚れたり、直腸が下着とこすれてキズができ出血をきたしたりします。

【直腸脱の治療】
直腸脱はどんなお薬を飲んでもつけても治りません。治そうと思ったら手術しかありません。手術もいろいろな方法があり、現在100種類以上の手術があると言われています。これだけたくさんの種類の手術があると言うことは、逆に言うと決定的に良い手術方法がないと言うことです。
大きく分けると、おなかを切って直腸をお腹の中に引っ張り込む方法と、お腹は切らずにおしりの方から行う手術があります。
おしりの方から行う手術にもいろいろあり、出ている直腸を取ってしまって、残った大腸と肛門を縫い合わせる方法(アルテマイヤー法)、出ている直腸の粘膜だけをはいで取ってしまい、直腸の筋肉を縫い縮める方法(デロルメ法)、それに私達が行っている経肛門的直腸縫縮・肛門輪縫縮術(ガント・三輪・ティールシュ法)があります。
ガント・三輪・ティールシュ法とは、ガント先生、三輪先生、ティールシュ先生の3人の先生方が考えた方法です。直腸を取ってしまったり粘膜をはぎ取ったりせずに、直腸の粘膜を器具ではさみ、これを糸で結んで結節(イボ)を作ります。このようなイボを直腸粘膜全体的に作っていきます。こうすることにより直腸は自然に縮められて中に入っていきます。これだけでは肛門のゆるい状態はそのままであるため、また再発する可能性があります。そこでゆるい肛門のまわりの皮膚の下に糸を入れて、肛門を正常な太さにまで縮めてやります。
これがガント・三輪・ティールシュ法です。たくさんある直腸脱の手術方法の中では、最も患者さんにとって負担の少ない方法の1つと考えています。
麻酔は普通、脊椎麻酔といって腰より針を刺す下半身麻酔で行いますが、この脊椎麻酔をかけるのも心配なご高齢の方は直腸を縫い縮めるときは麻酔なしで、ゆるい肛門を縮める時だけ局所麻酔で行うこともできます。直腸は痛みを感じる神経がないため、直腸を縫い縮める時は麻酔なしでできるからです。
手術の前日に入院していただき、手術の後4日目頃に退院して頂きますので全体で約6日間の入院となります。
昭和61年8月7日より平成29年1月31日現在までの間に187人の方が福井県済生会病院と慈豊会田中病院において初めてこの手術を受けられました。年齢は25才より96才に及び平均年齢は74才でした。男性の方は38人(20%)、女性の方は149人(80%)であり、やはり多くは高齢の女性の方でした。
ガント・三輪・ティールシュ法は、一般的には再発が多いと言われています。私たちは元の方法を改良した方法で行っています。私達の方法により手術した患者さんは、32年間の経過観察では7.5%と比較的低い再発率でした。
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Q5:直腸ガンのため人工肛門の手術を受けなければならないと言われまして大変なショックを受けました。人工肛門についての知識もほとんどなく不安です。何とか人工肛門の手術を受けないで済む方法がないものだろうかと思っています。人工肛門とはどういうものですか?また、人工肛門を作らないで済む直腸ガンの手術はないものでしょうか?(53才 女性)

よりわかりやすく御説明するために順を追ってお話していきましょう。

1.人工肛門とは?
人工肛門とは、腸の一部をお腹の外へ持ってきて穴をあけて、お腹から便がでるようにしたものを言います。人工肛門という言葉を初めて聞かれた方の中には、人工的な器具が腸の一部に付いているように思われる方もおられるかもしれませんが、腸の一部に何か人工的なものを作るわけではありません。
また、人工肛門というと、普通の肛門のようにしまりがあるように思われる方がおられるかもしれませんが、実際は普通の肛門のように便が出ない時にしまっていることはありません。腸が動いて便が送られてくると、しまりがないため便はためられず、そのまま外へ出てきます。そのため、普通は専用の袋をお腹に当てておかなければなりません。人工肛門からは1日1~数回便が出てきます。
人工肛門は精神的にも絶対にイヤだという人工肛門に対する嫌悪感をお持ちの方が多いように思われます。寝ている時や公共の場で、人工肛門にはった袋が外れて衣服が便で汚れ、周りにも臭気が漂いひどい目にあって以来、人前に出るのがおっくうになったという話や、においについて神経質になりすぎて家族に対して余計な気遣いをしてしまう方の話も聞きました。
しかし、人工肛門の手術を受けても、普段の生活にはまったく支障はありません。入浴、旅行も普通にすることができます。人工肛門をそれほど気にせずに運命として受け入れ、会社の社長さん、俳優さんなど社会でバリバリと活躍しておられる方もたくさんおられます。
アメリカでは人工肛門に対する拒否反応は少ないようです。イギリスにセントマークス病院という伝統ある大腸肛門の専門病院があります。世界各国から大腸肛門病学を志す医者が集まり研修を受けています。私もこの病院にて研修を受けましたが、その時他の医師と話したことでは、人工肛門はヨーロッパにおいては、患者さんに問題なく受け入れられているとのことでした。
しかし、日本人は、その国民性からでしょうか、人工肛門だけはごめんだ、精神的にも絶対にイヤだという人工肛門に対する嫌悪感をお持ちの方が多いように思われます。
いつもお腹に袋を下げているのを避ける方法として洗腸法を行うこともできます。これは微温湯を人工肛門より入れて大腸の中の便を強制的に出してしまう方法です。これを1~3日に1回行えば、その間人工肛門より便が出てくることはなく、ガーゼを人工肛門に1枚当てておくだけですみます。
福井県済生会病院では”虹の会”という人工肛門を持っている方の会があります。定期的に集まり、講演や情報交換会などの交流が行われております。
人工肛門には、一時的に作って後で閉じてお腹の中に戻す一時的人工肛門と、一生涯お腹より便が出るようにした永久的人工肛門があります。

2.直腸ガンとは?
直腸ガンを切除する際には、よく人工肛門が作られます。
直腸とは肛門のすぐ奥の大腸で、肛門から約15p以内の距離にあります。直腸ガンとはこの直腸の粘膜からできた悪性の腫瘍を言います。

【症状】

1.肛門よりの出血
出血は真っ赤で痔の出血と区別しにくく、出血するのは痔だろうと思って放っておいたら直腸ガンだったという例はよくあります。
2.便が出にくくなる
できもの(ガン)ができているため、便の通過を妨げ便が出にくくなります。
3.便が細くなる
できものができているため直腸の内径が狭くなり便が細くなります。
4.便をしても残った感じがする、便をしてもまたすぐに行きたくなる。
できものができているため便が全部出ず直腸の中に便が残ることになり、このような症状をきたします。
5.おなかがはる。
できもの(ガン)ができているため、ガス・便が全部出ず腸の中にたまるため、このような症状をきたす場合があります。
6.どうき、息切れなど貧血の症状
できものより出血をきたし、貧血のためにどうき、息切れがする場合があります。

【治療法】

治療法としては、早期のものは内視鏡(カメラ)を肛門から入れて取ったり、ガンを肛門から引っ張り出して、お腹を切らずに切除することができます。
しかし、進行した直腸ガンはお腹を切って取らなければなりません。ガンが肛門からある程度離れたところにできた場合は、ガンの下で直腸を切り、ガンの奥で大腸を切り、残った大腸と直腸をつなぐ手術で肛門を残すことができます。(直腸前方切除術)
ガンが肛門にかなり近いところにできた場合でも、最近では器械の進歩により、ガンの下で直腸を切り、ガンの奥で大腸を切り、両者を縫い合わせて肛門を残すことができます。(低位前方切除術)
しかし、ガンが肛門に非常に近いところにできた場合、あるいはガンの一部が肛門にまでのびてきた場合は、肛門を残すことは非常に難しくなります。すなわち、肛門も一緒に取らなければなりません。この場合は、ガンができた直腸の奥の大腸(S状結腸)を切断し、これより下のS状結腸、直腸、肛門を全て切除し(ひっこぬき)、切断して残ったS状結腸をおなかの外へ出し、永久的な人工肛門とします。(直腸切断術(マイルズ手術))

3.ご質問者へのお答え
この方の例では、おそらくガンが非常に肛門に近いところにできたため、人工肛門を作る直腸切除術を勧められたものと思われます。肛門からある程度離れた奥にガンができた場合は、先に述べましたように、低位前方切除術や超低位前方切除術を行い肛門を残すことができますが、肛門に非常に近くにできたガンの場合には、手術のあと、再発する危険があるため、肛門も取ってしまって人工肛門を作る直腸切除術を行わざるを得ません。
この直腸切除術は肛門の非常に近くにできた直腸ガンに対してはこれまでに述べてきた方法の中では、最も再発する危険が少ないと考えられるからです。
(肛門の非常に近くにできたガンの場合、S状結腸、直腸と同時に肛門の括約筋の一部も一緒に取って肛門の一部を残し、おしりから便を出すようにする肛門括約筋切除術という方法も最近行われていますが、再発がどの程度になるか、まだ長期の成績はでていません。)
誰でも、これまでおしりから便が出ていたのに、いきなりお腹から便が出るようになると言われますと大変なショックを受けます。勘弁してほしいと思われるでしょう。しかし、やむを得ない状況を理解され、皆さんはこのショックを通り抜けた後、人工肛門を受け入れ、普通の生活を送っておられます。
でも、できればおしりから便を出せる手術はないものかと思うのが人情です。

4.人工肛門を作らない手術、直腸切断術+薄筋形成術(dynamic graciloplasty)について
ガンが再発するのは嫌だけど、人工肛門だけは勘弁してほしいと言われる方もよくおられます。こういう方に対しては、直腸切除術+薄筋形成術(dynamic graciloplasty)という方法があります。
これは、、まず直腸ガンに対して、直腸切断術を行い下の方のS状結腸、直腸、肛門をガンもろとも完全に取ってしまいます。そのあと、人工肛門をお腹に作るのではなく、もとの肛門のあったところに作ります。しかし、この人工肛門には肛門をしめる働きはありません。そこで人工肛門にしめる働きを持たせるために、足の薄筋という筋肉をおしりに持ってきて、人工肛門のまわりに巻き付けてしまりを持たせます。これが薄筋形成術です。この薄筋は足の動きにはほとんど関係のない筋肉です。
もちろん、普通の肛門と100%同じというわけにはいきません。便が漏れたりすることもあります。しかしこの手術を受けられた11名の方にアンケートを取った結果では、全員が人工肛門よりは良いと答えておられました。
また最近、日本ではウォシュレットが普及しているため、手術の後、排便回数が多い場合でも、これに伴う不具合はかなり解消されています。
どうしてもお腹から便の出る人工肛門は絶対に嫌だと言われる方にとっては、これからはこの薄筋形成術が1つの選択肢と思われます。
肛門の非常に近くにできた直腸ガンや肛門までガンがのびてきた場合、それでも絶対に人工肛門は作らないで欲しいという場合、再発が少ない方法として、現時点では、直腸切除術+薄筋形成術しかないものと思われます。
多くの方は人工肛門に順応され、あまり気にせずに生活しておられるものと思いますが、中には人工肛門に泣いておられる方も少なからずおられるものと思われます。その方々にとりましても、薄筋形成術は朗報と思われます。
                

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TANAKA HOSPITAL医療法人慈豊会 田中病院

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